2012年6月8日金曜日

「十割そば」を考える

「十割よりも二八の方が好き」という方が結構おられるのですね、んで従って十割ではなく「二八」とご注文される。
もちろん嗜好は人それぞれなので、それをとやこう言うつもりはないのです。ただ、ワタクシ、そば屋に入って十割がメニューにあれば(懐に余裕のあるかぎり)必ず 十割を撰ぶのでありますね。なぜって、絶対二八よか旨いし。ってか、そう感じるし。
ですから、二八の方がうまいって言う方のお言葉はお言葉として受け止めながらも、なんでだろーと思っていたのです。オレの舌、おかしいのか?
そばが旨い、と知ったのはワタクシ、亀岡の「拓朗亭」さんや羽束師の「膳」さんのおそばであります。十割です。ので、デフォルトで十割は旨いと体感しているのです。ホントにおいしいと思います。それよりも旨い二八があるのか?
いろいろ文献をみると例えば故藤村和夫氏なんかも二八の方が旨い、と書いておられる。二対八が黄金比のように言う人もいるらしい。ふ~ん。

お客さんのいわはることで「ははあ、そゆことか」と思ったんですが、一般的な十割そばのイメージというのは、黒い、短い、太い、ぼそぼそ、という感じらしい。
ワタクシが感動した十割そばは、うっすら緑がかって細く長く、つるつるとすすり込むとソバの風味と甘みが口中に拡がる、という奴なのですよ。
これは全く別の種類のもんとして見ないと話が混乱するばっかりだなあ、と思い至った次第であります。
つまり、同じ「十割」というソバの配合割合を指す用語で示される特定のおそばですがその内実には、使用するソバ粉の種類(そばの実の部位)、ひき方、粉の細かさ、さらに言えば打ち方の違いによってできあがる無限のバリエーションを含んでいるわけでありますね。たとえて言えば「日本人」にはその人数分だけのバリエーションがあるのと同じなわけで。

で、製粉技術が発達していない時代や、そばに白さや長さを求めない場所では、十割のそばは、長くつながらない、外側に近い部位も混じって色黒く食感悪い、といった事になったのではないか、小麦でつなぐ二八の方がうまいじゃんという大方の評価が定まったのではないか、とあんまり文献的な根拠なく想像してるんですけどね。
それと、水だけではつながらないので、熱湯でソバ糊をつくってつなぐ「湯ごね」の必要があって、その分風味がとんでしまい、水だけでつなぐ二八に比べて風味もイマイチ、ということもあったかも。

逆に言えば、二番粉三番粉を細かく挽いて水だけでつなげば、二八よりも確実においしくなるんちゃうん?と思ってるんです。


とまあ、このへん、、駆け出しのチンピラそば屋の根拠レスな推理と想像ッスからホンマのところはよくわからんのですけどね。すんません。

まあ、何が言いたいかというと、十割でもいろんな十割があるけど、おいしい十割は問答無用でおいしいよ、ってことなんですが。
ワタクシの打つ十割が「問答無用でおいしい」かどうかは議論の別れる所ですし、個々人の嗜好の問題も無視できませんが、少なくとも、賄いを食べるワタクシと当店のスタッフは、ウチの二八と十割を比べたら問答無用で十割に軍配を揚げるのですよね。ホントにね~、二八より絶対おいしいんだよ~。

ひとつの野望として、先々、どっかの時点でウチのおそば、二八から十割に全面的に切り替えたいなあ、と思ってましてね。 やっぱり十割はおいしいし、それに二八打つときの小麦粉とソバ粉を別々に計る作業がとてつもなく大変な手間と重労働なもんで… (^o^)
しかしながら毎日枚数限定で十割を打ってるんですが、本日十割の売上はわずかに二人前(!)。ワリにあわないなあ、と。

んじゃまた
亭主敬白