さて、かねてより辛み大根を扱いたいと考えておりました。
私が神と崇める方のお店にはそれはもう鮮烈に辛い「おろしそば」があって、これが実に辛いのですね。しかして辛さの奥にほのかな甘さがキチンと控えていて、でやっぱり劇的に辛くて、それはそれは美味しいのです。確実に中毒になる辛さなのです。あ、やばい。書いてるうちに唾湧いてきた。う~、辛み大根おろし蕎麦くいてえ~。
辛み大根のおろしそば、いつかは我が店でと思ってあれこれ調べていたのです。
京都で辛み大根といえば鷹峯大根が有名であります。でもね、栽培農家が少なく、必然的に流通量が少なくて、私には仕入れルートが見つけられなかったのですね。まあ、しゃあない、どうしても鷹峯大根でなければというかたは老舗のお蕎麦やさんに行っていただきましょう。
で、我が蕎麦神から紹介いただいた農家さんから待望の辛み大根、仕入れることに致しました。味はよくわかっているのですよ、何せよく行った店で結構な頻度で食べたメニューで使ってる辛み大根なんですし。辛いなあ、うまいなあ、やみつきになるなあ、と言いながら喰ったやつですわ。
産地は兵庫県たつの市。お醤油で有名な町ですね。ここの農家さんから直送していただきました。さすがにスーパーの青首大根に比べたらはるかに高価であります。
クール便で着いた段ボール箱を勇んで開けるとカブラみたいなずんぐり寸足らずの大根が紅白2種類で収まっておりました。早速試食。小さめなのを一個取り出し皮をむいておろし金でシャカシャカ、二八そばを一人前湯がいて洗い冷水できりっとしめてざるそばに仕立て、蕎麦の上におろした大根をのせる。蕎麦を大根と一緒につゆにつけズズっとすする。辛い!うまい!
蕎麦屋始めて、毎日手打ち蕎麦が喰えることの喜びを感じているのでありますが、この辛み大根おろしそばがその気になれば毎日喰えるのかと思うと、もうしみじみと我が身の幸せを噛みしめております。いや、自分で喰っとったら商売になりませんね、もちろんメニューに入れて提供するのです。
辛み大根おろしそば 900円
冷たいおそばに辛み大根おろしをのせて、特製ぶっかけつゆをかけて食べていただきます。舌触りが残り、またその臭いが辛み大根おろしの香気を損なうようなので、あえてネギはつけません。禅寺(例えば永平寺とか)をおもわせるようなシンプルかつ真っ直ぐ芯の通ったような味わいが身上かと。で、うれしいことにこの辛み大根、通年で栽培しておられるそうな。うふうふ、真夏でも食べられるのでありますね。去年みたいな猛暑の中で、この辛さを味わったらそれはそれはうまかろうと思います。こんな食材扱えるなんて、もう誠に誠に幸せなのであります。うむうむ、蕎麦屋は楽しい。これで儲かってたら何にも言うことはないのでありますが。
んじゃまた
亭主敬白