使うネギは白ネギ(白くて太いやつ)、これをまな板の上ではなく、左手に持ち中空で、右手の包丁でそぐように輪切りにしていく。まな板の上で切るよりも繊維(だったか細胞だったか)がつぶれないから臭みがすくなくなる、との説明。理論的説明もそうですが、手元でささささっと薄切りネギが生まれてくるビジュアルはなかなかにかっこいい。職人、という感じがしたものであります。
さて、いざ京都で蕎麦屋を開こうと思うと、いうまでもなく京都/関西では九条ネギ(青ネギ )が一般的。御存知ない方のために付言すると、博多のほう(だったかな?)が特産の万能ネギよりも太く、関東で一般的な白ネギよりは細く、青味の部分が多いネギ。
これは白ネギと違って軟弱なので手に持ってさささっと輪切りにするのは不可能、というか私には無理。知り合いのお蕎麦やさんにきいてもやはりまな板の上で数本束ねて輪切りにするらしい。
で、あれこれ考えましたがやはり地元に馴染みのある食材を使う方が違和感なく受け入れてもらえるか、と思い白ネギではなく青ネギを採用し、毎日せっせと切っているのです。
さて、しかし、ネギに注意をむけて京都の老舗蕎麦屋さんへいってみると、別に青ネギにこだわっている、というか、青ネギでなければならない、ということは全然ないのですね。
京都の老舗蕎麦屋さんの中には東京で蕎麦の修行を積まれた方も結構おられるように伺っています。で、普通に白ネギのお店もあり、青ネギのお店もあり…。あ、なんだ、どっちゃでもええのか。要はポリシーと自信を持って選択すればよいのだ、と今は思っております。
考えてみれば焼き物の京焼き(清水焼き)も、全国各地の色んな技法が集まって総体としての京焼きを形成している。いや、専門家ではないので間違いがあったらご指摘頂きたいですが。ただ、素人目にも、これが京焼き、という特徴はよくわからないのです。素人目だからかも知れませんが。で何が言いたいかというと、都である京都は各地の色んな文化のるつぼであり、排除の論理ではなくそれらを鷹揚に受入れ吸収して洗練させて、独特の物にしあげているということなんだろうと思います。要は何でもありの多様性が根底にあるんだろうと。で、ええとこどりをしているのだろうと。
で、その「ええとこ」として選んでいただけるよう、精進せねば、という話なのでありましょう。
さて、当店のネギですが、「白ネギ使ったら?」とおっしゃるお客様もおられたのです。(東京ご出身の方だそうです)。その時は、「いやあ、京都は九条ネギですから」とお答えはしたのですが。
それからいろいろ調べてみると、刺激臭は白ネギの方が青ネギよりも強いのだそうな。だからこそまな板を使わない技法が確立されたのかもしれません。
個人的には白ネギがしっとり小皿にのってた方が、なにやら艶っぽい感じがしてちょっとドキドキするのですがねえ。
ただ、当店では越前風のおろし蕎麦を「蓮如蕎麦」という名前で売り出し中。山科の新しい名物にしようと画策しているのです。で、これにはやはり青ネギたっぷりでないと、大根おろしの白と色がかぶってビジュアル的に面白くない。
だったら、白ネギと青ネギ、両方切って使い分けたらええやんけ。と簡単にいけるほどの包丁の腕はまだないのです。で、ウチのネギは当面九条ネギ。ご了承賜りますように。
んじゃまた
亭主敬白